納税者権利保護規定の法制化を

納税者の権利確立のための運動の必要性

日本国憲法は国民を主権者としており、選挙によって自らの代表を議会に送り出し、議会の議決により、国民の拠出する税金の範囲を法律によって定めます。税金は国家という組織を運営するために必要ですが、納税の範囲や手続き、使途に関しては、主権者である国民に分かりやすく説明していくことが求められます。納税は「お上が勝手に取り立てるもの」ではありません。
全建総連は、納税者の義務と同時に納税者の権利が法律に書き込まれることが必要と考え、TCフォーラム(納税者権利憲章をつくる会:1993年4月に全国の税理士、弁護士、文化人、研究者、中小企業団体、労働組合等によって結成された市民団体。納税者権利憲章の制定を求めて運動を展開)と共に、納税者の権利確立の運動を進めてきました。2001年には「税務行政における国民の権利利益の保護に資するための国税通則法の一部を改正する法律案」、2002年には「国税通則法一部改正案」を、議員立法により国会に提出したが、残念なことに両法案とも会期切れにより廃案となっています。同時に学習活動にも力を入れ、党派にこだわらず、講師には、塩崎潤氏(国会議員、元大蔵省主税局長)、ピーター・セップ氏(全米納税者ユニオン副会長)、相沢英之氏(国会議員、前自民党税制調査会会長)、ビヨン氏(世界納税者連盟事務局長)、藤井裕久氏(国会議員、民主党税制調査会会長)等を招き、時節にあった学習会を開催してきました。
2011年度税制改正大綱には、「納税者権利憲章の策定」が盛り込まれました。また、国税通則法第1条の目的規定を改正し、「税務行政において納税者の権利、利益の保護を図る」ともされ、税務調査を行う場合の各種手続きに関して明確化するとしました。しかし、衆参のねじれ国会の審議の中で、最終段階で納税者権利憲章の制定は見送られました。しかし同法の附則には、「政府は国税に関する納税者の利益の保護に資するとともに、税務行政の適正かつ円滑な運営を確保する観点から、納税環境の整備に向け、引き続き検討するものとする」とされており、この規程を活かして今後の運動を進める必要があります。
なお、納税者権利憲章は、フランス、ドイツ、カナダ、イギリス、ニュージーランド、アメリカ、インド、韓国、オーストリア、スペイン、イタリアなどの国ではすでに制定されています。

冊子 第2版 新国税通則法の税務調査 納税者のためのよくわかる対策一問一答

2013年(平成25年)1月より国税通則法が改正され、税務調査の手続きが大きく変わりました。それまでの税務調査は明確に手続きが法制化されていなかったため、運用で行われる部分が往々にしてありました。しかし、今回手続きが具体的に定められたことで、納税者も、事前に通知される事項や終了時の通知の仕方などの規定を理解しておくことが必要です。
現在、税務当局は行政指導と税務調査を結びつけた調査の多角化や、事前通知が必要ないとする呼び出し調査を活用した情報収集に力を入れ始めています。納税者である自己を守るためにも、税務手続きに関する学習は重要なことから、2015年1月に「第2版 新国税通則法の税務調査 納税者のためのよくわかる対策一問一答」を作成しました。

一問一答