全国建設労働組合総連合 書記長 勝野圭司
2019年10月1日、政府は税率10%とする消費税増税に踏み切りました。
アベノミクスが始まって間もなく7年が経過しようとしていますが、格差が拡大する一方で多くの国民は景気回復を実感できる状況にありません。むしろ、実質賃金が減少を続け、生活必需品に至るまで以前にも増して節約をせざるを得ない状況です。その回復の兆しも見えない中での消費税増税は国民の負担をさらに増加させます。
政府は今回の増税による景気・経済の混乱を避けるため、複数税率の導入に加えキャッシュレス決済でのポイント還元やプレミアム付き商品券の発行など複数の施策の実施により「万全な備えで臨む」としていますが、国民の生活不安は払しょくされるどころかますます大きなものになっています。
消費税増税対策として打ち出された施策に投じられる国費は、増税による新たな国民負担5.7兆円のほぼ全額にあたる5.5兆円です。政府が消費税の使途として示している社会保障の充実や財政健全化ではなく増税対策で使い切ってしまうということであり、まさに本末転倒です。
消費税増税と共に始まった複数税率は国民から「複雑で分かりづらい」との指摘があるだけでなく、事業者にも大きな負担となっています。すでに複数税率への対応が困難として廃業した自営業者もあります。また、同じく10月から始まった区分記載請求書等保存方式を経て2023年にはインボイス制度が導入されます。小零細事業者にとっては消費税増税の影響に加え、納税額の増加や対応できないことによる廃業など大きな影響を与える制度です。
一方で、大企業は近年バブル期を超える史上空前の利益を計上しています。企業の莫大な利潤は労働者への賃金引上げや設備投資ではなく高額化する株主配当や内部留保に充てられ、特に内部留保は2018年度末の累計で463兆円と過去最高を更新しています。現政権により加速した大企業を中心とする法人減税は内部留保と過度な株主配当を肥大化させたに過ぎず、その財源に消費税増税の税収が充てられたといっても過言ではありません。
社会保障財源が消費税収中心でねん出され、大企業の利潤追求を中心とした経済政策をとり続ければ、少子高齢社会がより顕著となる将来に向けて際限のない消費税増税が繰り返されることになります。
全建総連は、引き続き、仕事と暮らしに大きな影響をおよぼす消費税増税をはじめとする大衆増税反対の取り組みを進めていきます。